これは僕が20歳になったばかりの話だ。
夏休みでバイトがない日はひたすら家でネットサーフィンかゴロゴロしていた
そんな中一本の電話が家にかかってきた。俺しかいなかったから出ることにしました。
女「もしもし、僕くんいますか?」
僕「はい、僕ですけど誰ですか?」
女「うち今大阪でアクセサリーを販売してんねんけど、今度東京にいくことになったんよ」
僕「はあ、、」
女「でな?東京の男の子にどんなアクセサリーがウケるか見てほしくって電話してんねんけど俺君はアクセとかつける?」
この時点ですでになんで会話成立してる?とか
明らかに怪しいだろ、と思うかもしれないけど
当時実際20歳になって世間知らずの僕は何も怪しいと思わなかった
名前はゆりちゃん。声がめちゃくちゃ可愛いかった。普段聞きなれてない関西弁。
20歳の男子ともなれば大体が女の事を考えているだろうから余計に警戒心が薄れていたんだと思う
誘いの手口
会話は続く
ゆり「それで俺君さえよければ●日に横浜にいくからそこでアクセみてもらえへんかな?」
僕「・・・場所とかは?」
ゆり「んー、個室の居酒屋とかどうかな??」
僕「いいよ、それで」
ゆり「ほんと?めっちゃうれしい~!いまから携帯の番号教えるからそれまでは、そっちでやりとりしよな」
ほんと当時の自分をぶん殴りたい。
可愛い女の子とデートできる!しかもお酒飲むだろうし何かあるだろ!
こんな感じで浮かれてた。
携帯での連絡も取れて、何気ない会話もしてたから安心しきってたし
なんか好きになってた
竜一登場
そして約束の日
服と髪を完璧な状態にして横浜へ出発。18時待ち合わせ。
改札前で待っていると藤原竜也と国分太一を足して割ったようなイケメンに声をかけられる
竜一「お、〇〇君か?」
僕「はい、そうですけど」
竜一「俺、ゆりちゃんの上司なんやけど今ゆりちゃん別の仕事長引いて遅れそうやねん。やから俺が先に場所まで案内してってことになったんやけどええか?」
僕「・・わかりました」
まじか、早く会いたいのになー。
遅れてるなら仕方ないかあ・・
としか思わなかったこの時点で。
そして居酒屋という話になっていたはずだが
大きいホテルの1階にあるカフェに連れていかれる。中は開放的な空間だった。
竜一「それにしても俺君はイケメンやな、服もおしゃれやし。アクセもいいな!どこでよく買うん?」
こんな感じでやたらに褒められる。
竜一は気さくなお兄さんでモテそうな感じで
話してて楽ではあったんだけど
早くゆりちゃんこないかな~としか頭になかったから
竜一との時間は不満だった。
その時はやってきた
竜一「そうそう、これがうちの会社で売ってるアクセなんやけどどーや?いけてる?」
そういいながらカバンから50個くらい指輪が入っているケースを取り出す
竜一「これなんかここがこうなってて、素材はあれをつかっててやな。この3つんなかなら俺君ならどれが好きや?」
僕「んー、これですかね」
二者択一法も自然な感じで使ってくる
仕方ないので1つ選ぶ僕
竜一「お!やっぱ僕君センスええな!これな100万円すんねん」
僕「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ここで初めて詐欺だと気づいた。
竜一は止まらない
竜一「もちろん100万円なんて高い金額1回で払うんなんて無理やろ?だからうちは1ヵ月1万で分割購入することができんねん」「こんなんつけてるやつ周りにおらんやろうからめっちゃモテるで」
一気にまくし立ててくる竜一と、状況を完全に理解した俺は恐怖により言葉が出てこず、なんとか会話を断ち切ろうと立ち上がって一言
僕「・・すみません。無理です。帰ります。」
本性を現す竜一
少しの沈黙があった後に
竜一「おい、なめとんのかお前。こちとら大阪からわざわざ出てきてんやぞ。ここまでにかかった費用お前が全部払えんのか?はやくここにサインしろや!!」
キャラが変わり、詐欺を認めるような発言をしてきた
もう僕は恐怖で「すみません」としかいえなくなり
この場から逃げ出そうとしていた。
こんな様子をみて竜一もこいつは無理だと思ったのか
竜一「もうええわ。時間の無駄やったわ。ここの飲み物代くらいは払えよ」
僕はデーブルにあったアイスコーヒー2個分の伝票をもって
走って会計をして逃げるように帰宅した。
ちなみに会計は2000円。たけえ。
帰宅してから放心状態から立ち直った後
ゆりちゃんのことを思い出した。
もう1回話せるかなと淡い期待を胸に携帯の発信ボタンを押してみた
「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」
こうして詐欺の恐ろしさを知ったのだった。
いつ詐欺にあうかはわからない
後にネットで竜一が言っていた会社名を検索してみると
デート商法でいくつか記事が上がっていた。
同じような手口で被害がかなり出ていたらしい。
気弱な人だったらあそこで逃げ出せずにサインを押してしまっていたかもしれない。
20歳という世間をまだ知らず、一人で契約が出来てしまう年齢が
ターゲットにされてしまうようだ。
自分は大丈夫だと思うかもしれないが、
いざ自分が標的になったときはどうなるかわからない。
20歳になった読者へ。
突然の可愛い声をした女から電話には気を付けてくれ。